絶縁体(Insulator)

絶縁体(Insulator) は、コネクタ設計において重要な部品の一つであり、主にインピーダンスを決める要素となると同時に電気的な絶縁と機械的な支持の役割を担います。

絶縁体は、信号の品質維持や信頼性確保に大きな影響を与えるため、慎重に設計・選定される必要があります。

絶縁体の役割

インピーダンス
例として同軸線路において、中心導体外径/外部導体内径/絶縁体誘電率の関係でインピーダンスが決まる為、絶縁体の誘電率は重要なファクターとなります。  

電気的絶縁
信号ピン同士やピンとシールド間の電気的な絶縁を提供し、短絡や漏電を防止します。

機械的支持
信号ピンやコンタクトを適切な位置に固定し、振動や衝撃に耐える構造を実現します。

環境耐性
高温、多湿、化学物質などの厳しい環境に耐える特性を提供します。

絶縁体の主な材料

プラスチック材料
ポリカーボネート(PC): 機械的強度と透明性が高い。
ポリアミド(ナイロン): 耐熱性と耐摩耗性が高く、車載用途に多用。
液晶ポリマー(LCP): 高温環境や高周波信号に適した特性を持つ。

熱硬化性樹脂
フェノール樹脂: 優れた電気絶縁性と耐熱性。
エポキシ樹脂: 高い接着性と絶縁性能。
セラミック:高い耐熱性と優れた絶縁性能を持ち、過酷な環境や高電圧用途等にも使用。

絶縁体の性能指標

誘電率(Dielectric Constant)
低誘電率の材料は静電容量を減少させ、高速信号伝送に適しています。

耐熱性
自動車用途では、-40℃から125℃以上の広範囲な温度条件に耐える性能が必要。

機械的強度
振動や衝撃に対する耐性が求められ、特に車載用途では厳しい車載適合試験に耐える特性が必要。

耐湿性
湿気や結露による絶縁性能の低下がない特性が必要。

絶縁体の課題

高周波信号対応
高速通信では絶縁体の誘電特性が信号品質に大きく影響するため、材料選定が重要となります。

熱膨張の管理
コンタクトと絶縁体の熱膨張率の差が大きいと、長期間の使用で信号ピンの保持に影響が出ます。

コネクタメーカーとしての絶縁体設計のポイント

シミュレーション活用
SI/PI(Signal Integrity / Power Integrity)解析を用いて、絶縁体の誘電特性が信号品質に与える影響を最適化する。

環境試験の実施
耐熱性、耐湿性、耐振動性などの試験を通じて、使用環境に適合した性能確認を行う。

素材の多機能化
自己消火性、UV耐性、化学耐性などの特性を付与することで、幅広い用途に対応を可能とする。

絶縁体の重要性

コネクタにおける絶縁体は、単なる機械的な支持部品ではなく、信号品質や信頼性を左右する重要な要素です。

特に高速通信や過酷な環境条件が要求される車載用途では、絶縁体の選定と設計がコネクタ全体の性能を大きく左右します。

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監修者

1990年~車載アンテナメーカーである株式会社ヨコオに入社。衛星通信機器の電気設計及びセラミックアンテナ及びフィルターの設計に従事し、その後車載通信機器事業部の電気設計管理職となり主に車載アンテナの開発を遂行。2018年~高周波コネクタ製品のトップシェアメーカーであるローゼンバーガーの日本法人であるローゼンバーガー・オートモーティブ・ジャパン合同会社に転職し、車載通信機器の開発で培った知識を生かし、マネージャーとして各OEM及びTier1へ製品の市場導入サポートを行っています。

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