LVDS(Low Voltage Differential Signaling、低電圧差動信号伝送)は、2本の信号線間の電圧差によって情報を伝える差動信号伝送方式の一つで、TIA/EIAで標準化された規格です。
一般的に±350mV程度の低振幅信号を用いることで、低消費電力かつ高速・低ノイズなデータ伝送が可能となります。
主に、高速・低ノイズ・低消費電力が求められるアプリケーションに最適な物理層インターフェースとして使われています。
なぜLVDSは優れているのか?
・ノイズに強い:差動信号は外来ノイズの影響を受けにくい。
・高速:信号振幅が小さいため、立ち上がり・立ち下がりが速く、数Gbps級の高速通信に対応。
・省電力:差動出力は3.5mAの電流源で駆動される。
・低EMI:信号電流が相互に打ち消し合うため、電磁放射ノイズが非常に少ない。
LVDSのシングルエンド構成(同軸伝送)について
LVDSは基本的に2本の信号線を使って差動で信号を送りますが、SerDes(Serializer / Deserializer)技術では、LVDSを1本の同軸ケーブルで伝送する構成が広く採用されています。
これを、“疑似シングルエンド伝送”または“AC-coupled LVDS over coax”と呼ぶことがあります。
PoC(Power over Coax)との連携
PoCは、同軸ケーブル1本で信号と電源を同時に伝送する技術です。
高周波信号(LVDS等)はケーブルの高周波成分に、電源(DC)は低周波成分に重畳され、受信側でフィルタリング(LCやトロイダルコイル)により分離されます。
LVDS+PoCの組み合わせが有効な理由:
・LVDSは低振幅・高速伝送に適しており、PoCによる電源重畳時のクロストークやEMIが発生しにくい
・同軸構成にすることで、ケーブル本数削減・軽量化・省スペース化が可能
この構成により、配線を1本に集約できるため省スペースかつ長距離伝送が可能となり、電子ミラーや周辺監視カメラシステムなどの高機能車載アプリケーションで主流化しています。