TDR(Time Domain Reflectometry、時間領域反射測定)は、伝送路に高速パルスを入力し、反射波形を解析することで、
インピーダンスの不連続点や特性を評価する手法です。
この技術は、同軸ケーブルや差動ペア、プリント基板の配線、コネクタなど、さまざまな伝送媒体の特性評価に広く用いられています。
測定原理
TDRでは、ステップ状の電圧パルスを伝送路に送信し、反射波形を時間軸で観測します。
伝送路のインピーダンスが一定であれば反射は発生しませんが、不連続点やインピーダンスの変化がある場合、反射が生じます。
この反射波形を解析することで、インピーダンスの変化点やその位置を特定できます。
測定結果は時間軸(Time of Rise)*に対するインピーダンス(Ω)で表されます。
1.TDR測定は、立ち上がり時間の非常に短い電圧ステップ信号(例:200ps以下)を伝送路(ケーブルや基板)に入力します。
2.この信号がインピーダンス整合された伝送線路を通ると、反射せずにそのまま進みますが伝送線路に何らかの
インピーダンス変化があると、信号の一部が跳ね返って戻ってきます。
3.TDRは、その反射波の“強さ”と“タイミング”を解析することで、どこでどの程度の不整合があるのかを判断します。

*Time of Riseとは
Time of Rise(立ち上がり時間)とは、TDRで使用されるステップ信号が10%から90%の振幅に到達するまでにかかる時間を指します。
このパラメータはTDR測定の「解像度」に相当し、Time of Riseが短いほど高速で微細なインピーダンス変化をより正確に検出することが可能です。
例えばコネクタ内部のピン構造、圧着部などの局所的な変化を検出するには、数十ピコ秒(ps)以下のTime of Riseが求められます。
逆にTime of Riseが長いと、応答が緩やかになり、急峻な変化や局所的な異常を見逃してしまう可能性があります。
そのため、TDRの測定精度と同様にTime of Riseの設定も評価の成否を分ける要素になります。
車載ネットワークにおけるTDRの活用
車載ネットワークでは、高速通信やEMC(電磁両立性)の観点から、伝送路のインピーダンス整合が重要です。TDRを用いることで、以下のような評価が可能となります:
・コネクタやケーブルのインピーダンス整合性の確認:設計通りのインピーダンスが保たれているかを評価します。
・製造時の不具合検出:はんだ付け不良や配線ミスなど、製造工程での問題を早期に発見できます。
・経年劣化の診断:長期間使用された伝送路の劣化状態を評価し、予防保全に役立てます。
ローゼンバーガー製コネクタとTDR
ローゼンバーガーでは、FAKRA、HFM®、HSD、H-MTD®などの車載向けコネクタ製品に対し、TDRによる特性評価を行っています。
これにより、以下のような利点が得られます:
・高精度なインピーダンス整合:製品ごとに最適化された設計により、信号の反射や損失を最小限に抑えます。
・製品間の性能比較:TDRデータを用いて、異なるコネクタの特性を比較検討できます。
・設計初期段階での評価:TDRデータを活用することで、設計段階から信号品質の確保が可能です。
TDRは、車載ネットワークにおける高速伝送路の特性評価に不可欠な手法です。
ローゼンバーガーのコネクタ製品は、TDRによる厳密な評価を経ており、高性能と高い信頼性で車載通信を支えています。